財務会計
企業結合、事業分離の会計処理は、下記の区分に応じそれぞれの方法があります。
ただし、2010年4月1日以降に行われる企業結合、事業分離には持分の結合に係る持分プーリング法の適用はなくなりますので、記載していません。
分割先企業の会計基準では、1.取得、2.共同支配企業の形成、3.共通支配下の取引等に区分して処理されます。一方、分割元企業及び結合当時企業の株主の会計基準は、1.投資の清算、又は2.投資の継続の処理がなされます。
基本的な会計処理の認識
認識区分 | 事業譲渡、合併、会社分割、現物出資、株式交換/株式移転 | |||
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分割元企業 | 分割先企業 | 結合当事企業の株主 | ||
取得(逆取得は除く) | 事業分離の会計基準- 投資の清算又は投資の継続 |
企業結合の会計基準- 取得 |
事業分離の会計基準- 投資の清算又は投資の継続 |
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- 逆取得 | 適用指針- 投資の継続 |
企業結合の会計基準- 逆取得 |
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共同支配企業の形成 | 適用指針- 投資の継続 |
企業結合の会計基準- 共同支配企業の形成 |
適用指針- 投資の継続 |
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共通支配下の取引等 | 企業結合の会計基準- 投資の継続 |
企業結合の会計基準- 共通支配下の取引等 |
事業分離の会計基準- 投資の継続 |
(注)関連会社との企業結合は、共通支配下の取引等には該当しません。
企業結合会計の概要
企業結合とは、ある企業又はある事業と他の企業又は他の事業とが1つの報告単位に統合されることを言います。
企業結合は、合併、会社分割、事業譲渡、株式交換、株式移転、現物出資などの組織再編で認識されます。会計上は、このような組織再編の形式にかかわらず、経済的実態により、「取得」、「共同支配企業の形成」、「共通支配下の取引等」の3つに分類され、それぞれの会計処理が適用されます(2008年度改正前の会計基準では、「持分の結合」という経済的実態に対応する会計処理も認められていましたが、2010年4月1日以降の企業結合からは適用されなくなっています。)。
(1)取得
ある企業が他の企業又は他の事業の支配を獲得すること
新会計基準では(3)(4)以外の企業結合のことを言います。また、逆取得とは、吸収合併などの企業結合において、存続会社など株式を交付した企業が取得企業とならない企業結合を言います。
企業結合が取得と判定された場合には、結合企業は被結合企業(吸収合併消滅会社、吸収分割会社、新設分割会社、事業譲渡会社など)から受入れる資産及び負債に企業結合日の時価を付すこととなります(被取得企業において計上されていなくても、取得した識別可能資産及び負債全てに時価を付します。)。
企業結合が取得と判定された場合は、結合企業が交付する株式等の財は時価で測定し、払込資本(資本金、資本準備金及びその他資本剰余金のいずれか)を増加させます。
受入れた資産及び負債と株式等の財の時価(取得原価)の差額はのれん(又は負ののれん)として処理されます。
ただし、逆取得の場合は、被結合会社の資産及び負債を適正な帳簿価額により引継ぎ、資産及び負債の差額は、原則として払込資本(資本金、資本準備金及びその他資本剰余金のいずれか)として処理します。
(2)持分の結合
いずれの企業(又は事業)の株主も他の企業(又は事業)を支配したとは認められず、
結合後企業のリスクや便益を引続き相互に共有すること
改正後会計基準では適用されません。
企業結合が持分の結合と判定された場合には、結合企業(吸収合併会社、新設合併会社、株式交換完全親会社、株式移転完全親会社)の資産及び負債を適正な帳簿価額により算定することとなっていました。また、結合企業は、原則として被結合企業の株主資本の各項目をそのまま引継ぐこととなっていました(吸収合併以外の場合、払込資本の増加として処理されていました。)。
持分の結合と判定されるには、下記の要件を満たすことが必要でした。
- 結合の対価が議決権付普通株式
- 結合後の議決権比率が50:50の上下おおむね5パーセントポイント以内
- 2.以外の支配関係を示す一定の事実がない(役員数等)
(3)共同支配企業の形成
複数の独立した企業が契約等に基づき、
共同支配企業(複数の独立した企業により共同で支配される企業)を形成すること
共同支配企業は、共同支配投資企業から移転する資産及び負債を、移転直前に共同支配投資企業において付されていた適正な帳簿価額により計上することとされています。
企業結合が共同支配企業の形成と判定された場合、資産及び負債の差額は原則として払込資本(資本金、資本準備金及びその他資本剰余金のいずれか)を増加させます。
(4)共通支配下の取引等
結合当事企業(又は事業)の全てが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、
かつ、その支配が一時的ではない企業結合
共通支配下の取引等により、企業集団内を移転する資産及び負債は、原則として移転直前に付されていた適正な帳簿価額により計上することとされています。移転した資産及び負債の差額は、払込資本(資本金、資本準備金及びその他資本剰余金のいずれか)として処理されます。
事業分離会計の概要
事業分離とは、ある企業を構成する事業を他の企業(新設される企業を含む。)に移転することをいいます。
事業分離の会計は、会社分割、事業譲渡等の分離元企業又は合併、株式交換等の企業結合における結合当事企業の株主において適用されます。
会計上は、事業分離により移転した事業に対する投資が継続しているか、それとも清算されたのかにより、適用すべき会計処理が決定されます。
分離元企業の会計処理
(1)投資が清算された場合の会計処理
投資が清算されたと判定された場合には、分離元企業が分離先企業から受け取った対価は、時価で評価され、移転した事業の資産及び負債の帳簿価額との差額(株主資本相当額)が移転損益として計上されます。
分離元企業が現金等移転した事業と明らかに異なる資産を対価として受取った場合には、通常投資の清算に該当します。
(2)投資が継続している場合の会計処理
投資が継続していると判定された場合には、分離元企業が分離先企業(吸収分割承継会社、新設分割設立会社、事業譲受会社など)から受取った資産の取得原価は、移転した事業に係る資産及び負債の適正な帳簿価額(株主資本相当額)に基づいて算定することになります。
分離元企業が対価としてを受取る株式が、子会社株式や関連会社株式に該当する場合、投資の継続となります。
被結合当事企業の株主の会計
(1)被結合に関する投資が清算された場合の会計処理
被結合企業の株式と引き換えに受けとった対価となる財の時価と、被結合企業の株式に係る企業結合直前の帳簿価額との差額を交換損益として認識します。受取った財は、時価にて再投資を行ったものとして処理します。
(2)被結合企業に関する投資が継続している場合の会計処理
被結合企業の株式と引換えに受取る資産の取得原価は、被結合企業の株式に係る適正な帳簿価額に基づいて算定します。したがって、交換損益は認識されないこととなっています。
結合当事企業の株主に係る会計
結合企業の株主に係る会計処理は、被結合企業の株主に係る会計処理に準じて行うものとされています。