平野公認会計士・税理士事務所(大阪)

高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除の特例

制度概要(消費税法12条の4①)

個人事業者及び法人が、小規模事業者に係る納税義務免除の規定(第九条第一項本文)、簡易課税制度の規定(第三十七条第一項)の規定の適用を受けない場合、課税期間中に国内における高額特定資産(棚卸資産及び調整対象固定資産のうち、その価額が高額なもの)の課税仕入れ又は高額特定資産に該当する課税貨物の保税地域からの引取り(高額特定資産の仕入れ等)を行つた場合(他の者との契約に基づき、又は当該事業者の棚卸資産若しくは調整対象固定資産として自ら建設、製作又は製造(建設等)をした高額特定資産(自己建設高額特定資産)にあつては、当該自己建設高額特定資産の建設等に要した費用の額が1,000万円以上となつた場合)には、当該高額特定資産の仕入れ等の日(次に掲げる高額特定資産の区分に応じて定める日)の属する課税期間の翌課税期間から当該高額特定資産の仕入れ等の日(又は建設等の完了した日)の属する課税期間の初日以後三年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、小規模事業者に係る納税義務免除の規定(第九条第一項本文、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合の納税義務免除)は、適用されません。

区分 仕入等の日
高額特定資産 ①国内で課税仕入れを行つた場合 当該課税仕入れを行つた日
②国内で特定課税仕入れを行つた場合 当該特定課税仕入れを行つた日
③保税地域から引き取る課税貨物につき申告書を提出した場合 一般申告課税貨物を引き取つた日
④保税地域から引き取る課税貨物につき特例申告書を提出した場合 特例申告書を提出した日又は当該申告に係る決定の通知を受けた日
自己建設高額特定資産 自己建設高額特定資産の仕入れを行つた場合に該当することとなつた日

除外

ただし、次の場合は、課税事業者となるため除外されています。
①その基準期間における課税売上高が1,000万円を超える課税期間
②第九条第四項の規定による消費税課税事業者選択届出書の提出する場合
③特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合(第九条の二第一項)
④免税事業者とならない相続の場合(第十条第二項)
⑤免税事業者とならない合併の場合(第十一条第二項若しくは第四項)
⑥免税事業者とならない分割等の場合(第十二条第二項から第四項まで若しくは第六項)
⑦新設法人の資本金又は出資金が1,000万円を超えて免税されない又は調整対象固定資産を取得した場合(第十二条の二第一項若しくは第二項)
⑧特定新設設立法人で納税義務が免除されない場合(十二条第一項若しくは第三項)

高額特定資産の範囲

高額の基準

高額特定資産とは、棚卸資産及び調整対象固定資産の次の区分に応じそれぞれの金額が1,000万円以上のものとされています。

区分 金額
自己建設資産以外の資産 ①一の取引の単位(通常一組又は一式をもつて取引の単位とされるものにあつては、一組又は一式)に係る課税仕入れに係る支払対価の額の百十分の百に相当する金額
②特定課税仕入れに係る支払対価の額
③保税地域から引き取られる当該対象資産の課税標準である金額
自己建設資産 下記の合計額
ただし、自己建設資産の建設等のために要した原材料費及び経費に係るものに限り、建設等を行つた事業者が法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除されることとなる課税期間又は簡易課税制度の適用を受ける課税期間中に国内において行つた課税仕入れ及び保税地域から引き取つた課税貨物に係るものを除きます。
①建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の額の百十分の百に相当する金額
②特定課税仕入れに係る支払対価の額
③保税地域から引き取られる課税貨物の課税標準である金額

自己建設資産とは、他の者との契約に基づき、又は事業者の棚卸資産若しくは調整対象固定資産として自ら建設等をしたものを言います。

棚卸資産の範囲

棚卸をすべき資産で次に掲げるものです。
①商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)
②半製品
③仕掛品(半成工事を含む。)
④主要原材料
⑤補助原材料
⑥消耗品で貯蔵中のもの
⑦前各号に掲げる資産に準ずるもの

調整対象固定資産の範囲

調整対象固定資産は、棚卸資産以外の資産で次に掲げるもののうち、一の取引の単位(通常一組又は一式をもつて取引の単位とされるものにあつては、一組又は一式)につき100万円以上のものです。
①建物及びその附属設備(暖冷房設備、照明設備、通風設備、昇降機その他建物に附属する設備をいう。)
②構築物(ドック、橋、岸壁、桟橋、軌道、貯水池、坑道、煙突その他土地に定着する土木設備又は工作物をいう。)
③機械及び装置
④船舶
⑤航空機
⑥車両及び運搬具
⑦工具、器具及び備品(観賞用、興行用その他これらに準ずる用に供する生物を含む。)
⑧次に掲げる無形固定資産
イ 鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し、又は採取する権利を含む。)
ロ 漁業権(入漁権を含む。)
ハ ダム使用権
ニ 水利権
ホ 特許権
ヘ 実用新案権
ト 意匠権
チ 商標権
リ 育成者権
ヌ 公共施設等運営権
ル 樹木採取権
ヲ 営業権
ワ 専用側線利用権
カ 鉄道軌道連絡通行施設利用権
ヨ 電気ガス供給施設利用権
タ 水道施設利用権
レ 工業用水道施設利用権
ソ 電気通信施設利用権
⑨ゴルフ場利用株式等
⑩次に掲げる生物(第七号に掲げるものに該当するものを除く。)
イ 牛、馬、豚、綿羊及びやぎ
ロ かんきつ樹、りんご樹、ぶどう樹、梨樹、桃樹、桜桃樹、びわ樹、くり樹、梅樹、柿樹、あんず樹、すもも樹、いちじく樹、キウイフルーツ樹、ブルーベリー樹及びパイナップル
ハ 茶樹、オリーブ樹、つばき樹、桑樹、こりやなぎ、みつまた、こうぞ、もう宗竹、アスパラガス、ラミー、まおらん及びホップ
⑪前各号に掲げる資産に準ずるもの
例えば、次のものが該当します。
イ 回路配置利用権
ロ 預託金方式のゴルフ会員権
ハ 課税資産を賃借するために支出する権利金等
ニ 著作権等
ホ 他の者からのソフトウエアの購入費用又は他の者に委託してソフトウエアを開発した場合におけるその開発費用
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