決算書作成
決算とは、一定期間(通常一年)のうちにどれ位の利益が上がっているのか、または損を出しているのか(経営成績)、また決算日現在の財産状況(財政状態)はどうなっているのかを把握するための計算手続きをいいます。この決算は、一定期間の末日(決算日)に会計帳簿を締切ることにより行われます。この計算期間や決算日は、定款によって定められています。
次に、決算書とは、経理業務の最終段階で作成される会計報告書で、一定期間の経営成績と決算日現在の財政状態等を示した書類のことを言い、通常、①損益計算書、②貸借対照表、③株主資本等変動計算書、④個別注記表のことを言います。
この決算書は、中小企業では会社法関連規定又は中小企業会計指針に従い作成されます。
決算書作成の目的
決算作成の目的は、決算書により一定期間の経営成績と決算日時点の財政状態を明らかにするため、利害関係者に報告することにあります。企業を取り巻く、利害関係者は多岐にわたっており、その利用目的にも種々のものがあります。
決算は一般的に会計処理や数字の集計を重視し、会計報告を重視しない傾向がありますが、迅速な決算による会計報告が行われない場合、経営者もタイムリーな経営判断ができなくなってしい、会社が危機的な状況に陥る可能性があります。
利害関係者 | 利用目的 |
経営者 | 経営成績の把握経営意思決定資料 役員賞与の算定根拠 株主への報告責任の解除 |
株主 | 経営成果の報告配当金の受領要求の根拠資料 株価算定の根拠資料 |
銀行、仕入先 | 与信の判断資料 |
従業員 | 賃金交渉の参考資料 |
税務署等 | 税務申告の根拠資料 |
格付会社 | 企業価値評価の参考資料 |
この他、投資家の意思決定資料、取引先の取引開始の決定資料、求職者の募集等にも有効であると言えます。
また、利用目的がある以上、会社にとって好ましい決算状況があります。
通常、決算に当たり、下記の点に配慮して決算処理を行います。
- 利害関係者から信用享受
- 経営成果の分配方法(役員賞与、従業員賞与、株主配当金)の検討
- 節税対策の検討
- 財政状態の健全化
決算手続の概要
決算手続の流れは、日々の会計記録を集積することにより作成された決算整理前試算表を基に、決算整理仕訳という決算時のみ使用する仕訳を計上することにより行われます。また、一定の場合、決算整理後試算表に組替仕訳を計上して、決算書を作成します。
決算処理及び決算整理仕訳
それでは、決算にのみ必要となる決算処理と決算整理仕訳の具体的な内容を説明します。
1、資産項目
- 現金、預金の残高調整
- 売掛金等の債権の評価と貸倒引当金の計上
- 商品、製品等の実地棚卸と資産計上(低価法の適用による損失計上含む。)
- 有価証券の時価評価と評価損益の計上
- 仮払金の精算処理
- 未収収益、前払費用の計上
- 固定資産の減価償却費又は償却費の計算と計上
- 固定資産の減損損失、評価減の計算と計上
- 繰延資産の償却費の計算と計上
2、負債項目
- 締日後未払給与、時間外の未払給与の計算と計上
- 賞与引当金、退職給付引当金、その他引当金の計上
- その他未払経費の計上
- 仮受金の精算
3、資本項目
- 特別償却準備金、固定資産圧縮積立金の計算と計上
4、損益項目
- 事業年度内売上の確定、修正
- 事業年度内仕入の確定、修正
- 未実現利益の消去
- 法人税、消費税の計算と引当計上
5、その他の項目
- 本支店間、本社工場間の内部売上消去及び内部利益消去
- 税効果会計の適用による繰延税金資産及び繰延税金負債の計上
- 表示科目の修正又は科目振替
- 金額の相殺表示