社宅貸与の原則

使用人に対して社宅が貸与されたとしても、原則として、その経済的利益額が給与として使用人に支給されたとみなされ、その使用人に所得税が課税されます(所得税法36条、所得税法施行令84条の2)。

社宅貸与の例外

使用人に対して社宅や寮などを貸与する場合には、使用人から1月当たり一定額の家賃(賃料相当額)以上を受け取っていれば、その使用人は所得税が課税されません。

賃貸料相当額とは、次の①~③の合計額をいいます(所得税法基本通達36-41)。
①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
②12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

賃料相当額を徴収しない場合

使用人に無償又は賃料相当額未満で貸与する場合には、その使用人に給与として所得税が課税されます。
具体的には、賃貸料相当額から実際に受け取っている賃料との差額が、給与として所得税課税されます。

ただし、使用人から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50%以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません(所得税法基本通達36-47)。

社宅が非課税とされる場合(所得税法9条①6、所得税法施行令21条①4)

国家公務員宿舎法の(無料宿舎)の規定により無料で宿舎の貸与を受けることによる利益、その他給与所得者でその職務の遂行上やむを得ない必要に基づき使用者から指定された場所に居住すべき者がその指定場所に居住するために家屋の貸与を受けたことによる経済的利益は非課税とされています。

具体的には、所得税法基本通達9-9に記載されている下記の家屋のようなものが該当し、非課税とされます。

①船舶乗組員に提供した船室
②常時交替制により昼夜作業を継続する事業場において、その作業に従事するため常時早朝又は深夜に出退勤をする使用人に対し、その作業に従事させる必要上提供した家屋又は部屋
③通常の勤務時間外においても勤務を要することを常例とする看護師、守衛等その職務の遂行上勤務場所を離れて居住することが困難な使用人に対し、その職務に従事させる必要上提供した家屋又は部屋
④早朝又は深夜に勤務することを常例とするホテル、旅館、牛乳販売店等の住み込みの使用人に対し提供した部屋
⑤季節的労働に従事する期間その勤務場所に住み込む使用人に対し提供した部屋
⑥鉱山の掘採場等に勤務する使用人に対し提供した家屋又は部屋
⑦工場寄宿舎その他の寄宿舎で事業所等の構内又はこれに隣接する場所に設置されているものの部屋

電気料等の水道光熱費

使用者が寄宿舎(これに類する施設)の電気、ガス、水道等の料金を負担することにより、居住する役員又は使用人が受ける経済的利益についても①料金がその寄宿舎に居住するために通常必要な範囲内であり、かつ、②各人ごとの使用部分に相当する金額が明らかでない場合に限り、課税しなくて差し支えないとされています(所得税法基本通達36-26)。

法人の経費処理

居住用に貸与している使用人の家屋を、使用人個人ではなく、使用者が賃貸借契約することにより、その家賃を会社の経費とすることができます。
すなわち、使用者が家屋を社宅として使用人に貸し付けた結果、使用者が支払う家賃と使用人から受け取る家賃の差額を損金に算入することができます。

また、使用者が家屋を保有の場合は、家屋に関連する減価償却費、固定資産税、保険料、修繕費などの費用は会社の経費とすることができ、使用人から受け取る家賃との差額が損金に算入されます。

住宅手当vs社宅の選択

使用者が社宅として使用人に提供する場合について記載してきましたが、使用者が社宅を提供する事務管理の煩雑さを考慮すれば、住宅手当を給与に加算支給する場合も考えられます。
使用者の支給総額を同額にした場合、社会保険料、所得税課税という側面からは社宅を提供した方が使用人にとって有利となります。

住宅手当(5万円)
社宅(社宅料半額)
給与の支払総額250,000円200,000円
社宅の地代家賃100,000円
社宅の受取家賃△50,000円
使用者の純支給総額(損金算入額)250,000円250,000円
使用人の社会保険料、所得税の計算基礎額250,000円200,000円
(差額50,000円に対応する社保と税金が安く済む)

役員社宅の課税関係はこちら…

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