損金計算の原則
法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額は、別段の定めがあるものを除き、下記の通りとされています(法人税法22条③④)。
①各事業年度の収益に対応する売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
②各事業年度の販売費、一般管理費その他の費用の額(ただし、事業年度終了の日までに債務の確定したものに限る。)
③その他事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
また、上記、損金の額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとされています。
会計基準の重要性の原則
税法が引用している一般に公正妥当と認められる会計処理基準では、本来は定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきとされていますが、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも認められています。
その容認処理として、重要性の乏しい前払費用は計上しなくても良いこととなっています(企業会計原則注1)。
短期の前払費用
税務においても上記の前払費用の不計上が認められていますが、短期前払費用の特例として国税庁から通達が出されています。
それが法人税法基本通達2-2-14の短期の前払費用です。
次の要件を満たす短期前払費用は、支払い時に損金算入することとができます。
要件
①一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものであること(前払費用)
②その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るもの
③すでに支払っている
④継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入している
当該規定の趣旨は、その費用の中身が月ごとにみても等質等量であるものならば、時の経過に応じて損金にしても支出時に損金にしても利益は変わらないので支出時の損金算入を容認するものであるので、等質等量でないサービスは支払時に損金算入することはできません。
また、例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、損益計算をゆがめてしまうため、たとえ短期前払費用であっても支払時損金算入の取扱いは適用されません。
参考
●平成17年1月13日東京地裁判決
●平成17年9月21日東京高裁判決
●平成18年11月24日最高裁上告棄却
短期前払費用の損金算入規定に該当しない例
短期前払費用の規定は、容易に読んでしまうと誤って適用することがありますが、例えば下記のような場合は適用されません。
また、通達の要件に該当する場合でも、規模や課税所得に対して重要性があると認められる場合や利益圧縮の意図があると認められる場合は税務否認される可能性はあると思われます。
①税理士報酬、新聞等の購読料
②1年を超えて役務の提供を受ける保険料、来期から役務提供が始まる保険料
③未払いで費用計上した一年分の広告料
④毎月払いの契約であるのに年末に1年前払いした場合
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