小規模事業者については、事務負担や税務執行コストへの配慮から消費税課税が免除となっていますが、消費税の免税を適切に受けることで税金費用を抑え、運転資金を確保することができます。
また、小規模事業者の消費税免税の特例を受けることで、消費税率アップなどの影響による政治リスクを回避することにもなります。

制度の概要

事業者のうち基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者は、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務が免除されます(消費税法9条)。

よって、その課税期間における課税売上高が1,000万円以下の場合であっても、その基準期間(2年前の事業年度)における課税売上高が1,000万円を超えているときは、その課税期間について小規模事業者の課税免除の規定は適用されることはありません(消費税法基本通達1-4-1)。

この制度は、消費税の免税事業者に該当するかどうかを、基準期間という過去の事業年度における課税売上高で判断することにより、事業者の消費税納税コストを売上高に転嫁させるかどうかを事業者自身で事業年度開始前に判断できるようにしたためです。

基準期間における課税売上高とは、次に掲げる事業者の区分に応じ当該次に定める金額をいう。

①個人事業者及び基準期間が一年である法人

基準期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から、返品、値引き、割戻しをした対価の返還等の金額の合計額を控除した残額

また、個人事業者については、基準期間の中途で新たに事業を開始した場合や事業を廃止した場合等その基準期間において事業を行った期間が1年に満たない時であっても、一年分の課税売上高に換算することはなく、その基準期間における課税売上高そのもので1,000万円以下かどうかで判定します(消費税法基本通達1-4-9)。この点、下記の基準期間が1年でない法人と異なる点です。

②基準期間が一年でない法人

基準期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から対価の返還等の金額の合計額を控除した残額を当該法人の当該基準期間に含まれる事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算した金額

(注1)なお、基準期間において免税事業者であった場合には、その基準期間中の課税売上高には、消費税が含まれていませんから、基準期間における課税売上高を計算するときには税抜きの処理は行いません(消費税法基本通達1-4-5)。
(注2)②の月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月と計算します(消費税法9条③)。

(例1)
前々年(消費税免税期間)の総売上高10,500,000円>10,000,000円
∴基準期間が免税期間である場合、基準期間の売上高には消費税が含まれていないので総売上高が1,000万円以下でなければ、課税期間中の消費税は免除されません。

(例2)
基準期間の課税売上高8,200,000円
基準期間の事業年度の月数 9月と15日
8,200,000円×12月/10月=9,840,000円≦10,000,000円
∴基準期間の課税売上高が1,000万円未満のため課税期間中の消費税は免除されます。

適用除外-特定期間における課税売上高等

個人事業者又は法人の基準期間における課税売上高が1000万円以下である場合においても、当該個人事業者又は法人の特定期間における課税売上高が1,000万円を超えるときは、その事業年度において小規模事業者の消費税免除の特例の規定は、適用されません(消費税法9条の2)。

特定期間

特定期間とは、次に掲げる事業者の区分に応じ次に定める期間をいいます。
①個人事業者 その年の前年一月一日から六月三十日までの期間
②その事業年度の前事業年度(七月以下であるものその他の政令で定めるもの(短期事業年度)を除きます。)がある法人 前事業年度開始の日以後6月の期間
③その事業年度の前事業年度が短期事業年度である法人 その事業年度の前々事業年度(その事業年度の基準期間に含まれるものその他の政令で定めるものを除きます。)開始の日以後6月の期間(当該前々事業年度が6月以下の場合には、当該前々事業年度開始の日からその終了の日までの期間)

(注1)6月の期間の末日が次の場合に該当するときは、前事業年度開始の日から次の日までの期間を当該6月の期間とみなして適用します(消費税法施工令20条の6①)。

①6月の期間の末日がその月の末日でない場合(当該前事業年度終了の日が月の末日である場合に限る。)-6月の期間の末日の属する月の前月の末日
事業年度末日が月末で法人設立日が月中の場合が該当します。

②6月の期間の末日がその日の属する月の当該前事業年度の終了応当日でない場合-6月の期間の末日の直前の終了応当日

課税売上高等

特定期間における課税売上高は、当該特定期間中に国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から、売上げに係る対価の返還等(税抜金額)を控除した金額の合計額を控除した金額のことを言います(消費税法9条の2②)。

ただし、個人事業者又は法人が特定期間中に支払った所得税法第二百三十一条第一項(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)に規定する支払明細書に記載すべき給与等の金額に相当するものとして財務省令で定めるものの合計額をもって、特定期間における課税売上高とすることができます(消費税法9条の2③)。

適用除外-新設法人の資本金等

基準期間がない法人(社会福祉法人その他の専ら別表第一非課税取引に掲げる資産の譲渡等を行うことを目的として設立された法人で政令で定めるものを除きます。)のうち、事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である法人については、小規模事業者の消費税免除の特例は適用されません(消費税法12条の2)。

適用除外-特定新規設立法人

基準期間がない法人((新規設立法人)社会福祉法人その他の専ら別表第一非課税取引に掲げる資産の譲渡等を行うことを目的として設立された法人で政令で定めるものを除きます。)のうち、その基準期間がない事業年度開始の日(新設開始日)において①支配要件に該当し、かつ、②一定の要件を満たすもの(特定新規設立法人)については、特定新規設立法人の各課税期間は小規模事業者の消費税免除の特例は適用されません(消費税法12条の3)。

①支配要件

他の者により新規設立法人の発行済株式又は出資(その新規設立法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の50%を超える数又は金額の株式又は出資が直接又は間接に保有される場合その他の他の者により新規設立法人が支配される場合として政令で定める場合であること。

②一定の要件を満たす者

新規設立法人が支配要件に該当する旨の判定の基礎となつた他の者及び当該他の者と政令で定める特殊な関係にある法人のうちいずれかの者の当該新規設立法人の当該新設開始日の属する事業年度の基準期間に相当する期間における課税売上高として政令で定めるところにより計算した金額(国又は地方公共団体が一般会計に係る業務として行う事業における課税資産の譲渡等の対価の額を除く。)が五億円を超える者。

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